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自分の人生にプライドを
株式会社リバイブ 代表取締役社長 平沼伸基
建造物の解体や産業廃棄物処理事業を手がけ、 資源循環を目指した取り組みを続ける株式会社リバイブ。
同社の若き社長、平沼伸基は同社社員、引いては業界の底上げを目指す。
解体業はまだ50年くらいの新しい業界。 産業廃棄物処理業はさらに新しい業界である。
「新しいからこそ、やり方次第でどんなふうにも変わっていく可能性がある」 という平沼の言葉には、
期待と決意が込められている。
すべての基本は「自分」

 株式会社リバイブの主要事業である総合解体事業は、地震が起きても壊れない強度の建物を意図的に壊す仕事である。そのため、現場作業は危険をともなう。ヘルメットや安全帯の着用が義務づけられており、作業者にはリスクマネジメントが求められる。
「自分で自分を守ることが必要な仕事です。ところが、ヘルメットや安全帯を人に言われて初めて身につける作業者が、時折、現れます。安全への意識が希薄で、仕事に対する気持ちが定まっていないと思わざるを得ません。残念です」
平沼は率直に言う。昔ながらの[職人魂]が形骸化し、技術とともに考え方も[職人]の域からは離れた人が増えてきているということだ。
しかし、そうした状況下でも安全性を確保することが、経営者の仕事であることも彼は心得ている。 「どれだけ優れた人間でも、人間である限り、忘れることもあれば、失敗もあります。そういうときでも、人が負傷しない、死なない体制を整備することは事業者の責任です。 何か起こったときに、そうした事態が防げなかったのであれば、

やはり危険をつぶせなかった事業者の責任が問われるのは、当然のことだと思います」
ヘルメットや安全帯が作業者各自に行き渡るようにするのはもちろん、セーフティネットを張る等、物理的環境の整備を推進することは事業者側の責任である。さらに作業者や現場管理者への安全教育を徹底し、各自のモラルを高めていくことも、平沼は経営者の仕事だと考えている。
「自分の身の安全を守る。それは人間として、動物として当たり前のことであり、そのためにはルールを守ることが必要です。逆に言えば、ルールを守って自分の安全を確保することは、危険な業務に従事する者にとって最低限の責任といえるでしょう。私は何もかも自己責任に転嫁する考え方には異論を持っていますが、自分で自分を守るための最低限の責任は、やはり各自が果たすべきだと思います。それを徹底するために、今後は社員教育に力を入れていきたいと思っています」
きっぱりと言い放たれた言葉には、決意が表れていた。



みんなで幸せになりたい
 そうした決意の背景を平沼は次のように語った。
「結局、安全管理は安全だけの話ではないのです。自らの仕事にどんな心構えで取り組んでいるのか。仕事は自分にとってどういうものなのか。仕事を通じて、何を実現し、自分はどのような毎日を送りたいのか。そして、どういう生活をしたいのか。自分の頭で考えて、そういう一連の問いに何らかの回答やイメージを持てる人なら、当然、最低限の責任は果たせるでしょう。しかし、それもできない社員がいるという現実は、自分の仕事や会社に自分なりの考えを持つことなく、ただ漫然と仕事をこなしているに過ぎない社員が少なからずいるということです。こういう現実は会社のトップとして真摯に受けとめ、何らかの対策を講じる必要があります」
その対策が、先の発言にあった社員教育なのである。
単純に「安全教育」に絞り込むのではなく、仕事や会社に対する意識、考え方まで広げて、社員の意識改革を目指す「社員教育」を平沼が提唱するのには理由がある。
「仕事や会社は、自分たちが望んだ形にしかなりません。だから、私は自らの仕事や自らが働く会
社に対して、社員各自が望ましい形を思い描けるようになってほしいと思っています。望ましい形を自分の頭で思い描き、その実現に向けて一人ひとりが主体的にまわりと協力しながら努力する。そうした毎日の積み重ねによって、自分の仕事内容や会社の事業は良くなっていきます。私は当社を、当社の事業をもっと良くしていきたい。だからこそ、それを共に実践してくれる社員を育てたいのです」
気持ちのこもった言葉だ。彼の言う通り、人は自らの考えや思いに従って行動し、現実を生み出していく。行動のもとにある思考や意識の改革は、現実の改善には欠かせないだろう。教育は人の思いから始まる。そして、思いの強さが人を強くし、学び続ける気持ちを育てる。
平沼は姿勢を変え、少し表情を緩ませて、さらに続けた。 「世間では、解体業や産廃処理に従事する人を格下に見る風潮が今もあります。解体工と聞けば、規律が守れなくても当たり前と考えるような偏った見方です。しかし、そんな偏見に自分たちが呪縛されたら終りだと私は思います。当社の社員は自分の責任を自覚し、きちんと仕事をやり遂げる力を持っています。だから、その力を
発揮してほしい。自分で考えて仕事を動かし、やりがいを実感してほしいです。仕事を通じて幸せになるためには、そういう仕事への取り組み方が必要だし、それによって世間の偏見を覆すこともできます。私の役割は、社員のヤル気のスイッチを入れることかもしれません」
ヤル気のスイッチ。確かに人間はきっかけさえあれば、大きく変貌し、能力を発揮することがある。
「私は社員を幸せにしたいし、私も幸せになりたい。みんなで幸せになるために、良い仕事をしたいと思っています」
仕事である限り、時には歯を食いしばってやらなければいけないこともある。けれど、何とかやり終えたときには達成感や充実感が得られるし、感謝されることもある。他の誰でもない自分が仕事を通じて幸せを感じるには、仕事に自分なりの目標やビジョンを持って取り組み、時には困難を乗り越えて実際に成果を上げ、人に認められたり、感謝されたりして、自信と豊かさを身につけることが必要だ。
平沼が志す「社員教育」とは、社員一人ひとりのそうした行動の素地をつくるということである。


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Revive People 01
代表取締役社長 平沼伸基
ひらぬま のぶき
1980年生まれ。 株式会社リバイブの創業家である平沼家次男として生まれ、葛藤の多い少年期を過ごす。現在は、自らの経験を内省して新たな展開を導く行動力と、合理的な思考を併せ持つ三代目社長として活躍。組織の力を最大限引き出すため、現場を主役にした会社運営を目指す。