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夢を描ける会社にしたい

 わずかな人数ではあるが、同社はほぼ毎年新卒の新入社員を採用している。ただ、その新入社員の同社への定着は、依然として難しい状況が続いている。新入社員教育プログラムの実施中や配属後に聞く新入社員の話から、各部門の人材育成に課題があることは見えてきていた。しかし、その解決への取り組みはいまだ進行中であり、万全とはいえない。そうした要因があることを承知した上で、久田は次のように語る。
「新卒社員の退職時に理由を尋ねてみると、当社で働く何年後かの自分をイメージできないから不安だという声が返ってきます。また、何をやれば正解なのかがわからないという声も聞きました。それは私自身が経験してきた思いでもあり、よく理解できます。しかし、だからといって辞めるという決断には、私は個人的に合意できません。不安、あるいは不満を感じたときには、我慢して踏ん張ることも必要だと思うのです。踏ん張って続けることで、必ず見えてくるものがある。新卒社員にはそれを見てほしいし、強くなっていく自分を感じてほしいです」。
 不安を乗り越えてきた久田の言葉だからこそ、
説得力がある。できなかったことができるようになり、わからなかったことがわかるようになる。その積み重ねによって見えてくる現実、見えてくる風景は、確かに何もできず、何もわからなかった頃とは大きく異なるに違いない。そうした視界と不安を乗り越えてきた自負を持てるようになれば、自信も湧いてくる。
「簡単には仕事から逃げない自信はありますよ」
と久田は笑った。そして、辞めていった新入社員の言葉について話し始めた。
「何年後かの自分がどうなっているかが見えないとか、何をやれば正解なのかがわからないというのは、実は当社の長所でもあると思います。決まったレールに乗って、決まった仕事を進めるだけの人生より面白いのではないでしょうか? 誤解を恐れずに言えば、今の当社には何でもできる自由がある。もちろん、やらなければいけない仕事はあるし、お客様にはご満足いただけるサービスを提供しなればなりません。ただ、そのための方法やさらなる躍進のために行うことは、自由な発想のもとで自ら考えて生み出すことです」。
 仕事の自由度が高いというレベルを超えて、ベ
ンチャースピリットを持って仕事を覚え、マーケットを見据えていけば、全く新しい事業を生み出すチャンスに出会えるかもしれない。リバイブはそんなスケールの大きさを備えた会社だと久田は考えている。
「廃棄物処理にこだわる必要はありません。会社のこれからに有用なビジネスであれば、自らのアイデアを活かして新事業を立ち上げるチャンスが当社にはあります。夢を描ける会社です」
 特に力を込めて語る様子もなく、ごく普通に話す久田は、同社で働くことで広がる可能性を既に随分前からわかっていたに違いない。それを新卒採用の社員にも知ってもらいたい、実感してもらいたいという願いを今の久田は強く持っている。






人を活かす仕組みづくり

 既成の考え方や従来のやり方にとらわれない発想を尊重するリバイブの企業姿勢。それを久田が強調するのは、廃棄物処理業界にイノベーションが求められている社会情勢を反映してのことだ。リバイブは早い時期から地球環境との共存を志向し、資源循環への道筋をつくってきた。今はその本格的な事業化を進めており、廃棄物処理の方法や工程はもちろん、お客様への提案内容も変化し続けている。静的ではなく動的。リバイブの事業は片時も止まらず、動いている。そして、その事業は廃棄物処理というフィールドを超えて、これからの人々の暮らし全般を見据えて広がっている。
「産廃業や建築物の解体業には、今後の道筋として選択肢が無数にあります。無自覚な廃棄が許される時代ではない今だからこそ、厳しい規制を超えた新たな方法、新たな展開が求められており、
社会がイノベーションを待っているのです」
 かつて同社は廃棄物を燃やしたときに発生する熱エネルギーを用いて、地域に温泉をつくり、その周辺にレストランやオーガニックマーケット、農園をつくるというコミュニティ構想を発表した。それも一つのイノベーションであり、進展途上のプロジェクトである。同社の資源、強みを活かして展開できる事業は本当にいかようにも広がる。
 新たな展開を迎える今後の事業を担う組織をいかに形成していくか。企業としての中核課題である組織、人員体制を整備するのも、統括事業本部長である久田の役割である。
「人は組織の本質であり、企業活動を考える上での資源です。新しい人はいろいろなものを運んできますから、それを経営に活かしたい。そのため
に採用を行い、人材育成の方法を模索しています。『リバイブへ入社すれば、成長できる』と言われるくらい人材を豊かに成長させる企業になりたいし、採用した社員が定着して、組織の力になる仕組みを考えたいと思います」
 そう語る久田自身が、リバイブに入社して豊かに成長した社員である。人材育成の仕組みをどこまでシステム化できるかは未知数だが、久田のように実際に成長した社員がそれを手がけることは信頼に値する。偶然から必然へ。忍耐から意欲へ。自らの成長軌道を一般化した仕組みに落とし込み、社員であれば誰もが利用できる人事制度、教育システムの策定へとつないでいくことを久田は目指す。人を育て、事業を育て、まちを育てる。リバイブと共に成長してきた久田のこれからの取り組みに注目したい。






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Revive People 04
統括事業本部長 久田佳典
ひさだ よしのり
2000年入社 四日市大学経営学部経済学科卒業 愛知県出身。
 1977年生まれ。小学生時代から野球を始め、高校時代に腰・肩・ひじを傷めて一旦遠ざかるも、大学では軟式野球部を立ち上げて復活。それが現在は草野球チームになり、岐阜県羽島市のリーグに所属。久田のポジションはセンター。仕事だけでなく、野球との縁も長い。
 年1回は子どもと雪山へ出かけてゲレンデでそりを楽しむ父親でもある。4月から小学校1年生になる子どもは「スキーをやりたい」と言っているそう。職場結婚からはじまった久田の家庭は温かく育まれている。