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遠慮なく物を言える関係をつくりたい

 一人で走ってきた今までと部下を持つようになったこれからは、仕事のやり方も、考え方も全く異なる。課長になって1ヵ月が経ち、奥村はそう実感した。もともと仕事は自分からやるものだという思いが強かったこともあり、当初1ヵ月間は部下に指示してやってもらうとよい仕事も、奥村は部下が自分から「私がやります」と申し出ることを期待して、指示することなく自分でこなした。そのために、仕事は到底定時には終らなくなり、夜中までかかることもしばしばあった。
「帰りが遅いことは気になりましたが、課長になったばかりだし、私が口出しすることではないので、毎晩気長に待っていました」
 敦子は健気にそうしていたが、人間には「体力の限界」があり、とうとう奥村は倒れてしまった。
「仕事はたくさんあります」
 おもむろに奥村は話し始めた。
「廃棄物を入れるコンテナの設置や交換、缶の引き上げ、配車もルート配送ができるように効率よく組まなければいけないし……」
 具体的な仕事を次々と挙げて、次のように言葉を締めた。
「そんな仕事の数々を、部下に指示してやってもらうことも、…少しずつ進めていこうと思います」
 自分で仕事を動かしてきた人間であれば、今、何をすべきか。何をやったほうがいいのかがわかる。奥村はそんな気づきを無視できない。しかし、だからといって自分が動くのではなく、部下を動かすことも管理職としては必要だ。
 誰もが人に言われなくても、自ら気づいて仕事をすることができたら、それは理想的である。ただ、それが実現しないときに、気づかない人が仕事に対して消極的だと言い切るのは危険だ。消極的なわけではなく、自分がやってもいい仕事だとは思わなかったり、そういう仕事が必要であること自体に気づかなかったりすることも多い。そんな現実に思い至ると、気持ちよく仕事を進めていく上で大切なことは、「何でも遠慮なく言える人間関係」なのだと思えてくる。
「いろんな意味で、私自身がこうでなければいけないという自分の思い込みに縛られないようにしたいです。仕事は自分ひとりでできるものではないので、これからは仲間を意識して、遠慮なく物が言える職場の人間関係を築いていきたいですね」
 身をもって実感したことが、奥村のその言葉にはこもっていた。





今の幸せを楽しみながら持続可能性を拡大

 廃棄物の分別を推進し、できる限り多くの資源を再利用する循環型社会を創造するために、同社が推進する分別教育のための「善・循環モデル現場」。国際的に資源循環を望む声が高まり、それに対応した日本の法令整備も進むなかで、2013年からリバイブはこのモデル現場の提案・普及に力を入れている。おかげで、同社では分別を望む顧客企業が確実に増大。こうした現象を見据えて奥村は次のように語る。
「分別が今、増えていて、そのうち日本の工事現場の廃材はすべて分別することになると思います。そんな時代の転換を目の当たりにして、何十年も前から分別を叫び、自主的にそれを推進してきた前社長はスゴイと心から思います」
 感慨とともに奥村が語る言葉には、会社幹部のことだから(=前社長は現会長)、恩人のことだ
から褒めるといった邪念は一切ない。純粋にスゴイと思っている気持ちが伝わってくる。そんな人がいる組織の管理職になった今、奥村は自分を変えていく岐路に立っている。
「来月、管理職の基本セミナーに参加します。自分は一匹狼のタイプでしたが、課長になったこれからは仕事の姿勢や進め方、タイムマネジメント等、いろんなことについての意識を変えていく必 要があると思っています。それによって、自分の伸びしろを増やすことができるでしょうし、会社の仕事そのもののあり方を見直すこともできるんじゃないかと思います」
 携わる人の意識が変われば、仕事のやり方は変わる。そこが、人間の仕事の面白いところである。
 かけがえのない仕事に出会い、そこで出会った最愛の女性と結婚してマイホームまで建てた奥村。
そんな奥村の妻、敦子にこれからの生活への期待を尋ねると、穏やかな答えが返ってきた。
「なかよく健康に暮らしていくことです。今は好きなトラックに乗れて、家のこともできて、私は幸せですから」
 その言葉を聞いて、奥村も自然に笑顔になった。そして
「名古屋に根を下ろして、会社のイメージアップになるような運転をするドライバー部門をつくっていきたいです」
と言った。望ましい未来は具体的な行動から生まれる。ドライバーとして豊かなキャリアを持つ奥村が、まず「運転」の見直し・強化に着眼したことは妥当である。敦子とともに心安らぐ家庭を築き、仕事の土台をかためた奥村のリバイブ人としてのキャリアは、これから開花していくことだろう。







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Revive People 03
産廃事業部 Sドライバー課長 奥村幸規
おくむら ゆきのり
 2000年11月より(株)リバイブの傭車(業務委託ドライバー)となり、傭車のコアメンバーとして活躍。2011年8月に社員となり、同年11月に同僚ドライバーの敦子と結婚。2014年8月課長に昇進し、今後が期待されている。

産廃事業部 大型車両パートタイムドライバー 奥村敦子
おくむら あつこ
 2006年入社。当初から大型トラックドライバーとして活躍。身だしなみを整えるようにトラックも常にキレイに乗りこなす。結婚後は週3日、パートとしてドライバー業務を行っている。

 クルマ好きの2人は、オフタイムもクルマいじりに励んだり、アートトラックのイベントへ出かけたりして、生活を楽しんでいる。東日本大震災のチャリティとして行われたアートトラックのイベントには、全国から見応えのあるアートトラックが数多く集まり、盛り上がったそう。奥村はトラックと聞くと連想されがちな荒っぽいイメージを、清潔なトラックを安全に運行するリバイブのドライバーの仕事ぶりによって変えていきたいと考えている。